昆虫食とリスク認知

昆虫食に対する、Twitter、ヤフーコメント、はてなブックマークでのコメントなどを読んでいて、
昆虫食に対するこの反応は、放送大学のリスクコミュニケーションの講義で見たヤツだなと思った。

ことの発端は、高校での給食でコオロギパウダーを使用した食品を提供したことではあっても、
SNSでの反応は、ニュースになっている給食そのものに対しての反応なのではなくて、
将来の自分の食生活がどうなってしまうのかという点に対する不安や、リスクに対する反応であるように思える。



人間のリスク認知がどのようなリスクを大きなリスクだと考えやすいのかというのは、
リスクコミュニケーションという学問分野で研究されているので、
これらを念頭に置いてコミュニケーションを行った方がいいのではないかと思う。

公平性

一部の人に損害が、一部の人に利益が発生する場合、そのリスクは大きく感じられる。
将来タンパク質不足が起きても、お金持ちは以前と同じように肉食を続けるが、
低所得者は経済的理由から昆虫を食べざるを得なくなるという不公平さが認識されると、
リスク認知は大きくなる。

制御可能性

個人的な対処で対応できると感じられるとリスクを小さく感じる。
昆虫食にSDGsという旗印を使うことで、いま現在は昆虫食を拒否できても、
将来的には、昆虫を食べないことは、反社会的な行動だとみなされるのではないか?
実質的な自己決定権が侵害されるのではないか?という懸念。

即効性

悪影響が遅れて現れる場合、そのリスクは大きく感じられる。
昆虫食によるアレルギーへの懸念、生活習慣病への懸念は、すぐに表れるものではないので、
リスクが大きく感じられる。

便益の明確さ

明確な便益がないとリスクが大きく感じられる。
昆虫食によってタンパク質を取るというが、大豆などの豆類ではなぜいけないのか、
昆虫食でないと実現できないような明確な便益がないとリスクは大きく感じられる。

情報の一貫性

複数の情報源から矛盾する情報が得られると、リスクが大きく感じられる。
大豆のアミノ酸スコアは1973年基準値では86とされていたが、
1985年基準値ではアミノ酸スコアは100とされており、アミノ酸スコアからは、
植物性タンパク質のみであっても、生存は可能ではないかと思われる。
一方で、昆虫食を推進する情報源からは、動物性たんぱく質の摂取は必須とされており、情報源による情報の一貫性がない。
自分たちに都合の良い、情報を恣意的にピックアップしているように感じられて、
信頼性が下がり、リスクが大きく感じられる。



昆虫食を推進しようとする団体は、おそらく昆虫についての専門家であって、
消費者、一般の生活者がどのようなことを考えているのかということを、
あまり分かっていないのではないかと思う。
昆虫食を推進するためには、どのようなコミュニケーションを消費者と進めていけばいいのか、
リスクコミュニケーションを学んでみるとよいのではないかと思う。


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